介護人材定着・育成のための取組み
「神奈川の介護福祉の現場が取り組む職員育成状況把握調査」から見る人材確保・育成への取り組み

VOL1

アースサポート株式会社

「職員は大切な財産。職員育成のその先にいきいきした職員の姿を!」
https://www.earthsupport.co.jp/(別サイト)

アースサポート株式会社は、訪問入浴介護を中心に全国に拠点を展開しており、多くの職員の方が各地域で活躍しています。

職員一人ひとりが地域でいきいきと働くために、どのような人材育成や環境作りをしているのか、能力開発グループの丸山実智瑠(マルヤマミチル)さんと沓澤いづみ(クツザワイヅミ)さんにお話しを伺いました。

【職員の「育成」に関する取り組み等について】

今回、職員のための育成・研修制度について調査をしたところ、職種ごとにキャリアパスを設け、社内独自のレベル認定・スキル認定制度というものがあると回答をいただきました。

この制度について詳しく教えてください。

●レベル認定制度・スキル認定制度~キャリアパスの見える化~

このレベル認定制度・スキル認定制度は、もともと職員に介護の魅力を知ってほしいという思いから、「仕事の魅力向上」を目的とし独自の制度として生まれました。

制度が誕生してから10年以上が経ちますが、現在では、職員に成長してほしい・キャリアアップしてほしいという目的のもと、制度をとおして「自分が今どのくらいの力量で何が課題なのか」を見える状態にすることで、それぞれの職員に必要なキャリアパスをわかりやすく伝えています。

また、法改正に伴う変更点や、直近だとBCP(自然災害等発生時の重要業務の継続)に関すること、看取りケアなど、職員に押さえておいて欲しい内容がある場合は、適宜内容を更新しながら継続をしているという状況です。 

●自分の力量(現在地・課題)を知る

当社はメイン事業が訪問入浴介護ですが、例えば、訪問入浴介護の職員におけるレベル認定制度では、レベル1からレベル5にステップが分かれています。レベル3が一人前ということになるのですが、初任者には「まずはレベル3を目指そう」と勉強会や研修を通して伝えています。

レベルアップするための認定審査では、職員自身による点検、上司による点検、客観的な立場の第三者による点検の3つを行っています。この第三者として点検をする人を「ピアレビュアー」と言います。ピアレビュアーとは「ピア=仲間」「レビュアー=点検者」という意味で、「同じ目線の仲間として点検する職員」を指します。また、誰でもよい訳ではなく、レベル4・5の職員から、レベル3と認定された職員がその役割を担っています。

大きく分けて7つのカテゴリーで点検を行いますが、訪問入浴介護にあたり必要な知識や技術はもちろんのこと、お客様とのコミュニケーションや、組織の一員としての法人理念の理解、タイムマネージメント、リスクマネージメントも必要となります。

職員を評価するのは難しい部分もありますが、だからこそ複数の視点をもって、職員のいいところや課題を客観的に見つけていくことが、職員の成長のためにとても大切な要素となっています。

●OJTの担い手の育成

レベル認定制度におけるレベル4・5になると、人材を育成する・指導する力量が求められます。レベル4の職員は自拠点で、レベル5の職員は所属している拠点以外の地域やブロックなどでその指導力を発揮してもらいたいという期待もあり、指導者となる職員についての認定審査はやはり厳しくなります。

職員を指導するために必要な視点・視座・考え方を身につけていくためにも、法人主催のワークショップ等に参加してもらい、レベルアップを目指してもらいます。

●レベル認定制度・スキル認定制度に込めた願い

このレベル認定制度・スキル認定制度は、職員が一人前になるまでとその次のステップである人材の育成・指導者としてのレベルになるまでのキャリアパスを見える化できるようにしていますが、ただ単に介護技術が上がればいいという目的の制度ではありません。

現場で働く職員は大切な財産となりますので、いきいきと働いて欲しい、質の高い人材になって欲しい、ひいてはその地域に定着して頑張って欲しいという願いがあり、10年以上にわたり内容を見直しながら取り組んでいる職員育成の制度の一つとなっています。

職員の成長が定着や質の向上につながり、お客様にも会社にも結果的によい影響を与えると感じています。

【職員が安心して働き続けることができる環境作りについて】

職員向けの相談窓口の設置や定期的な面談制度、原則転勤なしなど、職員のために様々な環境作りをされておりますが、どのような相談ができる窓口があるのか、また、よりよい環境作りのため工夫していることなどを教えてください。

●職員の様々な悩みや困りごとに対応した相談窓口

相談といっても幅広いので、相談窓口は細分化してます。セクハラ・パワハラなどのハラスメントに関する窓口は本社に設けていて、男性・女性それぞれの担当がいます。

あとは利用者支援に関する相談窓口があります。これを「サービスおたすけ窓口」と呼称しており、現場スタッフが「お客様からこういうことを言われたんたけれども、誰にどのように相談していいかわからない」「ケア方法について他拠点の取組みや事例を知りたい」という個別の相談に対して、その相談に応えてくれる人に繋げるという仕組みになっています。

もちろん、近くにいる職員にすぐに相談できればよいのですが、訪問支援だと職場によっては、職員が一堂に会することが難しいこともあります。また、他の職員が忙しそうな時は聞きにくい場合もあるかもしれません。そのような時はこの「サ-ビスおたすけ窓口」を活用してもらいます。窓口への連絡は電話ではなく、「サービスおたすけ窓口」専用のQRコードがあるので、携帯で読み込んでピッと送ることができるようになっています。

他には、相談窓口が義務化されたこともありますが、育児休業や介護休業に関する相談窓口も設けています。

●社内報を通した情報発信とコミュニケーション

年に4回、社内報を作っていますが、会社の伝統でこの社内報は雇用形態に関係なく紙ベースで皆さんに手渡ししています。

確かにメールなどで送信すれば早いですし、ペーパーレスにもなると思うのですが、手渡しすることで上司や職員同士のコミュニケーションのきっかけにもなると考えています。「日々おつかれさま。最近調子はどうですか?これ社内報なんだけど今回はこんなトピックでね」などの一言で会話が生まれていくという面では、コミュニケーションのツールの一つにもなっているのではないかと感じています。

社内報の内容は様々ですが、働きやすい職場を作ろうということで取り組んでおりますので、介護労働安定センターの離職理由に関する資料を参考にしたり、職員向けの相談窓口の案内や、「サービスおたすけ窓口」のQRコードを載せたり、職員へのサポート体制の周知にも活用しています。

また、職員を取材して紹介する時には、上司からのコメントを載せることもあります。取材を受けた職員はモチベーションも上がりますし、普段会うことはないけれども、他拠点の頑張っている職員を知ることで、職員同士の刺激にもなればいいなと思います。

他には、CS(顧客満足度)向上・推進への取り組みや訪問入浴介護の指導体制などをトピックとして取り上げ、配布して終わりにならないよう、職場内研修で教材として使う等工夫しています。

【インタビュー編集後記】

今回取り上げたレベル認定・スキル認定制度や職員向け相談窓口の設置、社内報の活用の他にも、キャリアチャレンジ支援プログラムや女性活躍推進など、様々な独自制度や職員のための環境作りをしていることを教えていただきました。

職員育成のための独自制度を体系的に構築し継続していくにあたり、法人の規模大きさが全く関係ないとは言えませんが、制度を作るにあたっての背景や仕組み作りには、「職員一人ひとりにいきいきと活躍してもらいたい」「よりよい環境で働いてほしい」という法人の強い「想い」があることを知ることができました。

なかでも、職員がいつでも活用できるようにと「サービスおたすけ窓口」への相談にQRコードを取り入れICTを積極的に活用する一方で、社内報は紙ベースで職員全員へ手渡しするなど、その一つひとつの制度や取り組みに明確な目的を持ち、柔軟な対応をしていることがとても印象的でした。

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