利用者の尊厳を守り、自立を支援する~接遇に込める思い
神奈川県ホームヘルプ協会・湘南 サービス提供責任者 坂本満帆

地域に密着したホームヘルプサービス
私が勤める事業所は、約20人の訪問介護員(以下:ヘルパー)が登録し、現在は介護保険事業の訪問介護と、お子さんからお年寄りまで、どなたでも利用できる介護保険外の「助け合い型のホームヘルプサービス」もあわせて実施しています。地域に密着したサービスを提供するため、登録しているヘルパーの居住地から、自転車で15分程度で移動できることを目安にした活動エリアで訪問活動を行っています。
働きながら介護福祉士を取得
私の祖父母に介護が必要になったとき、親戚や両親が大変そうにしている姿を目にしました。また、病院などでも、介護で困っている人たちにふれることがあり「介護で人助けをしたい」という思いが募り、最初は、特別養護老人ホーム(以下:特養)に勤めました。
特養では、様々な人生について利用者から教えて頂き、一人ひとりに対応していくことの大切さを学びました。また、職場には資格取得に積極的な職員が多く、自分も知識を増やして仕事に役立たせたいと思い、働きながら介護福祉士の国家資格を取得しました。
その後、出産を機に特養を退職して、育児をしながら短時間で働くことができる、訪問介護の仕事を選び、現在の事業所に入職しました。
きっかけの気持ちはなくならない
施設介護から訪問介護と、働き方は大きく変わりましたが、介護福祉の業界から離れることはありませんでした。
それは、介護福祉の仕事は、人との関わりから得られるものが多く、人生の先輩方の言葉で自分が成長している実感があるからです。この人と関わる介護福祉の仕事は「好き」ですし、「介護で人助けをしたい」という最初の思いはずっと変わりません。
ヘルパーとサービス提供責任者を兼務
訪問介護では、利用者の自宅を訪問して、食事介助や入浴介助、排せつ介助などの身体介護、掃除や洗濯などの生活援助などを提供します。現在私は、ヘルパーと兼務で、サービス提供責任者として、利用者の話を伺い、訪問介護計画書を作成したり、ヘルパーの訪問スケジュールを調整したり、サービス担当者会議に出席したり、必要なサービス内容の提案や、利用者の生活に関わる課題を共有したりと、利用者に対する責任を伴うものが多くなりました。
訪問したヘルパーが利用者に必要なサービスを提供でき、利用者をはじめその家族にも喜んで頂けた時には、大きな喜びを感じます。
専門職として~利用者本位のサービス提供と「接遇」
支援の際に心がけていることは、利用者の生活歴や家の雰囲気、例えば玄関の様子、部屋にどんな絵が飾ってあるかなど、その方の「生活」の状況を確認しながら援助を行います。
訪問先では、明るく挨拶、時間に遅れない、靴を揃える、丁寧に扉を閉めるなどの所作、そして利用者に合わせたコミュニケーションを心掛け、利用者の尊厳を守り、主体性を尊重しています。
利用者との会話は、相手の目線よりも低く、車いすを利用されている方や座っている方には膝をついてお話を伺うなど、見下す姿勢にならないよう気をつけます。そして、利用者の話のペースを崩さないように呼吸を合わせ、会話の流れに沿って、ゆっくりと会話ができるように心がけています。
また、利用者とのコミュニケーションでは、言葉だけで記憶して頂くことが難しい場合には、紙に書いて残るようにしたり、目につくカレンダーに大きな文字で書いたり、普段から見える位置にメモを置いたり、貼り付けたりして利用者に適した伝え方により、支援を行います。
昨今、独り暮らしの方が増えています。ヘルパー以外とは誰とも話をしていない、誰とも会っていない方もおり、ヘルパーの訪問を心待ちにしている方も多くいます。毎日、一人で寂しい思いをされており、お会いすると溢れるように喋り出す方もいらっしゃいます。そんなときは、利用者の気持ちをまずは受け止めるようにしています。
こうした利用者とのコミュニケーションは専門職としての声掛けや傾聴など、専門性を発揮する場面であり、利用者の本音を聞き取ることができる大切な時間だと思っています。
多様な働き方が可能となる訪問介護
ヘルパーの中には、掃除が苦手、調理が苦手という人もいますが、苦手な家事があっても活躍している人はたくさんいます。それは、利用者の支援内容と、ヘルパーの得意な所を見極めて、サービス提供責任者が訪問先の調整を行うからです。
今、中高年層を中心に、セカンドキャリアで介護福祉をめざす人が増えています。社会経験のある人たちがキャリアチェンジや定年を機に、介護福祉の分野で仕事していただけると、多様な人材が活躍でき、新しい視野で物事を見る事ができると思います。訪問介護は人生経験の豊富な利用者と接することで勉強になることが多く、自分が成長でき、視野を広く持つ事ができる仕事です。
今後にむけて
私は利用者に信頼される存在になっていけたらいいなと思っています。つまり、利用者に安心してもらえること、一緒にいてなんだか楽しかったと言われるような、そんな人になりたいです。いろいろな人に関わる事ができる仕事だからこそ、話し方やその場の雰囲気を感じ取り、その場の状況に応じた対応ができる、介護福祉の専門職になっていきたいと思っています。